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「なぁ、次の村は仕事になると思うか?」
少年が隣でへたりこむ連れの少女に尋ねた。
「にゅ~、そんなの行けば解る事だと思うにゃ」
面倒くさそうに言う。
アスファルトの道が、真っ直ぐに続いていく道端で、一組の少年少女と1匹が佇んでいた。
目深に被った大きめのフードで表情は分かりにくいが、少女は呆れているようだ。
「キュー」
思わず殴ろうかと思案した少年に、斜め上でたしなめるような鳴き声を発する。
そちらを向くと、白い鱗に覆われた、小さなドラゴンの蒼い瞳にぶつかった。
「キュリオ」
名を呼び、片腕を差し出すと、慣れた様子で留まる。
「クキュー」
甘える様な声で鳴くキュリオの、細い顎をそっと撫でる。
「まぁ、仕方ない。どちらにせよ、ゲノムを狩らなきゃならない事に変わりはない」
少年は、日輪のように輝く金色の瞳を細め、藍色の髪を掻き上げた。
「今回は、私の獲物~」
少女は立ち上がり、少年を見下ろす。
「あ゛?ふざけんな、俺のだ」
少年は険を滲ませた瞳で、少女を見上げる。
「私のに決まってるにゃ、ドちび」
「何だと!?俺より年下の癖に生意気な!」
怒りを露に言葉を荒げると、そんな彼を茶化すように、少女はベーっと舌を出した。
僅かに覗いた犬歯が、キラリと光る。
「…チッ…ムカつく奴」
少年は、あの時この少女を連れて来た事を心底後悔した。
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