蝉の少女 (8月25日)

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夏。完全無欠なまでに夏で、夏休みだった。 夏休みの宿題も早々に終わらせた僕は、来年に迫った高校受験への勉強もそこそこに、家でだらだらと過ごしていた。 「………………♪」 クーラーをガンガンに効かせたリビングで、寝っ転がってマンガを読むのが夏休み限定で僕の日課となっている。 親は…………いない。 正確に表すならば、旅行に出掛けているのである。 僕が中学に上がってからというもの、両親は毎年夏休みの最後の1週間にはデートと称して旅行に出掛けるのだ。 当然、その間僕は一人で家事の全てをこなさなくてはならない。 ピーッピーッ 「あ……洗濯終わった」 よっこらせ、とばかりに立ち上がり、洗濯物を干し始める。 3年目ともなれば慣れたもので、僕一人分の洗濯物ともなれば瞬く間に干せてしまった。
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