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と、自転車を漕ぎながらふとベンチに目をやると
「うわっ!?何だ!?」
瞬間、強烈な光が炸裂した。
閃光は一瞬のうちに網膜に到達、僕の視界は白一色に染められた。
僕はバランスをくずして自転車ごと倒れかけるもギリギリ踏みとどまる。
今のは一体何だったんだろうか?
ふと周囲を見回して、異変に気づいた。
「誰も気付いてない・・・?」
周りではしゃいでいる子供たちやベンチでくつろぐ老人たちは、まるで何事も無かったかのような様子だった。
あんなに激しい光だったのに、誰も気付かないなんて・・・
興味が、沸いた。
気付けば、僕は自転車を降りて先ほどの光源、ベンチ裏の木陰へと駆けだしていた。
僕は刺激が欲しかったのだろう。
両親のいない、たった独りの夏休み。変化のない日常に嫌気が差していたのも事実だった。
「ここか・・・」
先ほどの閃光の、光源・・・だと思われる樹木の根本に、僕はいた。
何十年も噴水公園の歴史を見守ってきたであろう、歴史を感じさせる大樹だった。
僕は小学生だった頃には、よくこの樹に登って遊んだものだ。
って、樹は今は関係ない!
心を回想から引き戻し、気を取り直して樹の周辺を探る。
すると
「ん?これは・・・蝉か」
大樹の根元、たくましく伸びた根の陰に、一匹の蝉を見つけた。
蝉の近くの地面には穴が。
どうやらついさっき成虫になったばかりのようだ。
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