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カタン
小さな音に、ウトウトしていたユラの意識が呼び起こされた。
「バーカ。寝てないんだろ?」
とたんにかけられる言葉。
「…仮眠はとってる。君に心配されるまでもないよ。君は明日の戦いのことだけ考えていればいい」
ユラはやりかけていたた光パネルのキーをいじった。
フォンという機械音と共に明日行われるだろう戦いの場所が浮かび上がる。
「私にできるのは君たち戦闘員を援護することだけだ」
ユラは一瞬言葉を切り、そして顔を上げないまま呟くように言葉を吐き出した。
「でも最近思う。私はこれでいいのかと。私は…国は、正しいのか?」
シュッと風を切る音がした。
ぴたりと首筋に当てられた冷たい感触にユラはため息をつく。
「いいのかだと?国は正しい。それを信じるのが兵士だ、ユラ」
「分かってる。戦争だもの。ただの価値観の相違だよ。正義や悪なんて語りようがない」
それでも、とユラは思う。
点滅するパネルを見つめながら、ユラはかつて滅んだ祖国に思いを馳せた。
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