序章

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マヤは放課後、担任に呼び出しをされた。マヤは品行方正なので、悪いことをした訳ではない。友人に別れを告げた後、職員室に向かう。 「しつれいします」 念のためブレザーとスカート、リボンタイを正し、職員室の扉をノックした後に入る。それから担任の机のある場所へ歩く。職員室内は、いつもどおり落ち着いた雰囲気で、コーヒーの香りがした。 「あ、藤堂さん。ここに座って」 担任は、マヤの姿を見つけると、隣の机から椅子を抜き、座るように促す。 「はい」 マヤは短く返事をして、椅子に座る。そうすると、担任と向かい合う形になった。 「えっと、進路についての話なんだけど……」 「はい」 「就職活動は上手くいってるかい?」 担任は、手元の資料を見ながら、気さくな態度でマヤの就職活動についてを訊ねた。 「はい、受けたい会社が見つかりました。事務系なんですけど、私に合ってるかなって」 確かに、合っているかもね、と担任は頷く。 マヤは、あと数ヶ月で高校を卒業をする。卒業後は進学ではなく就職を望み、良い就職先を探し、ようやく見つけたのだ。 「事務系は近年、競争率が高いからね、これから大変だろうけど、藤堂さんだったらきっと大丈夫だよ。何かあったら、相談してください」 担任に、肩を柔らかく叩かれる。 「はい、ありがとうございます!」 「うん、じゃあ、今日はこれ位で終わり。気を付けて帰ってね」 「はい、さようなら」  マヤは深々と一礼した後、立ち上がり、静かに職員室を後にした。
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