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「そっかぁ。
残念ながら、俺にも分からないや。
あっ、これ貸してよ!
ユウに聞いて来てやる!」
と井上は雑誌を持って、田崎の方へ走っていった。
『ユウ』と言うのは田崎のニックネーム。
田崎に見せられたら怒られる…。
そう思うと気が重かった。
しばらくすると、井上が戻って来て、
「ユウが解いてくれるって。」
と言って、部室から去って行った。
確かに田崎はシャーペンを片手に頭を抱えたりしながら、何かを書いていた。
「ねぇ…はっちゃん、あの本どうするの?」
と幸子が言う。
どうなるんでしょうか?と私が聞きたかった。
怖いけど…返してもらわなきゃと思って、私は立ち上がった。
「返してもらってくる。」
と私が言うと、幸子は心配そうに私を見た。
ただ田崎の日頃の行いを見ているから、一緒に付いて行く気はしなかったのだろう。
歩いたらすぐの距離も、気が乗らないと、長く感じるもんだなぁと思った。
何度も立ち止まり、振り返ったりもした。
でも勇気を出そう!と決めたんだ。
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