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卒業式そのものは、特別な事は無かった。
田崎が卒業証書を受け取った時だけは、あちこちから話し声が聞こえたけれど。
そして、卒業生が退場。
私達在校生は拍手で見送る。
まず井上は後ろを歩く友達に、ちょっかいを出され、笑いながら歩いていた。
そして田崎は前後を歩く友達と笑いながら歩いて来た。
何だか楽しそうだなと思って見ていると、私の方を向いて、小さく手を振った。
私も小さく手を振った。
それに気付いた在校生は私に注目する。
「あの子は誰?」
「田崎先輩の彼女?」
「まさか、あのブスが?!」
聞きたくないセリフが耳に飛び込んで来た。
私はブス。
そんなのは分かってる。
田崎をいくら思っても、つり合うなんて事は無い気がする。
だけど、田崎が私を見てくれてる限り、目を反らしたくない。
田崎は大切な先輩だよ。
まだまだ恋とか分からない。
付き合うとかも分からない。
今の気持ちが憧れなだけなのか?
本当に恋なのか?
中途半端な気持ちを抱えながら、田崎を見送るしか無いと思ったんだ。
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