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田崎にもう会えないとして。
私は何か伝えるべき事があるのかな?
でも、『ありがとう』くらいは言いたい。
そう思った瞬間、私は走り出していた。
田崎が今、学校にいるかどうか分からない。
とにかく、靴があるか見に行こう!
そう思って走る。
すると校舎の外に出たばかりの田崎の姿が見えた。
私は走りながら、
「田崎先輩!」
と叫んだ。
田崎は立ち止まり、キョロキョロしている。
そして、私の姿を見つけてくれた。
私は田崎の目の前まで全力で走った。
「葉月、どうした?」
田崎は私の顔を覗き込む。
私は息切れする中、
「田崎先輩!
それ、下さい!!」
と田崎の制服のボタンを指差す。
「へっ?!」
田崎は驚いたような声を出した。
「それ、下さい!」
もう一度、私はボタンを指差した。
すると田崎は、
「嫌だ。」
と真顔で言った。
私の頭の中は真っ白になった。
しかも何だか悲しくて泣きそうだった。
何も言葉が出なくなってしまった。
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