転機

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私は田崎の横に立ち、 「あの…。」 と声をかけた。 「ん?」 と田崎は顔を上げた。 「そっ…それっ…私の本…。」 と私が言う。 「あぁ。 出来る所まで、やっといた。 こういうの他にもあるの?」 と田崎が言う。 「はい…。」 「また分からなかったら持って来い。」 「あっ、はい! 分かりました。 ありがとうございました。」 私は田崎から本を受け取ると、早足で皆の所に戻った。 「どうだった?」 と博美が聞く。 「分からなかったら、また持って来いって…。」 と私が答えると、皆がビックリしていた。 「へぇ…あの田崎先輩がねぇ…。」 と博美が呟く。 そして、私達はいつものように雑談に花を咲かせたのだが、田崎は何も言わなかった。 「今日、怒られないな。」 と誰か男子が呟いた。 怒られないと嬉しいはずが、怒られないと気持ちが悪い。 いつもの怒鳴り声を当たり前に思ってた私達は、数えきれないくらい、怒られていたんだと思う。
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