転機

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それからの私は田崎に対しての恐怖心みたいな物が少し薄れていた。 ただ井上が部室にいるのが前提。 また忘れた頃に怒られるのも嫌だ。 「また持って来たのか?」 と田崎に声をかけられるようになった私。 それから度々、田崎と2人で本を見ては、ぶつぶつ言い合っていた。 そこで分かったのは、田崎が賢い人だって事。 私の読めない漢字を読めるし、スラスラと答えを書く。 私が苦戦した問題をさっさと解く。 「何、ジロジロ見てんだよ、お前も考えろ!」 と久々に怒られても怖くは無かった。 そんな日々が続く中、私の知人の南優衣(みなみゆい)が途中入部をして来た。 優衣とは同じ小学校だったが、クラスが違っていたので、友人と呼べる程、接点は無かった。 それでも会えば話したりもしていた。 「ねぇ、葉月さん。 あの人だれ?」 と優衣が田崎を指差した。 「田崎先輩だよ。」 「田崎先輩か、かっこいいね。」 「そう?」 「あーいう人、好きだわ。」 と優衣は田崎の方を見つめていた。
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