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言葉を探していて、気づいた。
私は、話すのが怖かったのだ。
なぜ、何がそうさせるのか分からないが、心の奥から沸き起こる、彼を拒絶する何か。
マナミは、私にケータイを渡した。
その液晶が写し出している、彼の名。
マナミの手が、背中に触れる。
私は、両瞼を閉じ、一呼吸置いた。
「あ、もしもし?」
「ん?松原どした?」
「私の声、忘れた?」
彼の動揺は、電話口でも分かった。
「切らないで!!
……お願い。ちょっと話聞いて。聞いてくれるだけでいいから」
私の目には、まだ彼が写っている。
「私ね、知ってた。千恵美とのこと。
それでね、気づかなかったかもしれないけど、頑張ったんだよ。
まぁ、戻ってきてくれなかったけど」
泣かない。
泣いたら、話せなくなる。
伝えられなくなる。
だから、好きな彼でいてくれた事にありがとうって笑って言うって決めたの。
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