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いつものカフェ。
お洒落な感じはあるが、気取っていないような、くつろぎやすいこの空間が好き。
そして、奥角にあるソファーに座る。
彼と付き合い始めたのもこの場所。
そして……。
私が座ると、彼はすぐに店員を呼び、アイスコーヒーを2つ。
『カタン!』と、テーブルの上に固い物の音がした。
「俺ら、別れよ」
「え?」
「最後にちゃんと言っておきたくて」
「そっか。やっぱり……」
知っていた。
私の他に女がいたこと。
もしかしたら私の元に戻るかもという、淡い期待を抱きながら、いつかこの日が来ることを分かっていた。
女の影を見つけてからの1ヶ月、私は彼に好かれるようにと背伸びしてみたり、女の子らしくしてみた。
でも、彼はその半分も気づいてくれない。
すでに私を見ていなかった。
「女?」
「いや……」
そんなこと聞きたくなかったのに。
「いつから?」
分かっていたのに。
堪えても声が震える。
コーヒーを置くと、店員は、逃げるようにして奥へと戻った。
2つのカップは、指輪の横に置かれた。
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