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絶対にしないって決めていたのに。
彼がシャワーを浴びていた時、私は彼の部屋を片付けていた。
ただ、出てきた彼を驚かそうと思った。
でも、驚いたのは、私だった。
シャツを畳もうとした時、裾に赤い跡を見つけた。
それは、口紅の跡。
私の色ではない。
誰のだろうか。
電車内でついたのだろうか。
風呂場の音に、止まっていた私の手は、再び動きだした。
綺麗になった部屋を見て、彼はこう言うだろう。
「あれ?片付けたの?メッチャ綺麗じゃん!ありがと。
あ、変なもんイジってないよな?」
そして、それを聞いて私が悪戯に彼を驚かす。
少し笑えてきて、掃除が楽しくなってきた。
一通り片付いた時、テーブルの上にあったケータイを見つめた。
さっきの口紅が頭をよぎり、手に取ってしまった。
彼が出てきた時、私はうまく笑えていただろうか。
『今日会えない?』という、千恵美からのメール。
それ以上は見れなかった。
親友がそんなことするはずない。
小さな疑念が確信に変わるまで、時間はかからなかった。
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