コーヒー

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 彼は、コーヒーカップを見つめたまま、答えた。 「もう無理なんだよ」 「何がよ?」  なぜ、私はこんなにも可愛いくないのだろうか。  でも、初めて男の前で女としていられる瞬間をつくってくれたのは、彼だった。  今までの男では、感じる事のなかった永遠。  その永遠は、たったの2年で、今まさに終わろうとしていた。 「頼む。別れてほしい」 「やだ。やだよ」  なんて惨めな私。  この2ヶ月で、状況を変えられなかった。  そして、別れを言われた。  つまり、既に終わっていた。 「何が、何がダメなの?」 「ダメっていう訳じゃないけど、ただ……前のように愛せない」  何も返す言葉が見つからなかった。  彼は、コーヒーを飲み干し、鞄に手をかけた。  その瞬間、私はその手を掴んでいた。  驚く彼の顔。  そして、目をそらして残した一言。 「さよなら」  簡単にほどけた私の左手。  どのくらい、残された指輪を見つめていたのだろうか。  コーヒーは温く、いつもと同じ味だと思えない程、苦かった。
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