さよならの後に

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 あの言葉が反芻する。  一日中部屋で塞ぎ込み、月曜には泣き腫らした目で出社した。  風邪を引いたとか適当な嘘でごまかし、肉体的にも疲労しきった体は重たく、帰路の電車がとても遅く感じた。 「さよなら」  もう会えないと思うと、なんて悲しい言葉なんだろう。  立ちながらでも寝過ごしてしまいそうな頭を起こそうと、ケータイをいじりだした。  最近では開かなくなったコミュニティサイト。  友達に誘われ、何と無く登録したが、使用したのは最初だけで、だいぶ長い間放置していた。  彼と付き合い始めた頃、彼も登録していたことを知り、協力したり、競い合ったりもした。  その友達欄から、彼を消す。  日記にいた昔の私は、楽しそうで、結末を知らず描いていた未来に、また涙が出そうになる。  新しい日記を書いた。  タイトルは、『さよなら』。
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