フランダースの犬・終

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「節約節約っと」 あろうことか、ネロ少年は鼻をちーんしたチリ紙を、肩から下げた小さいポシェットに入れました。 「また使うだろうし、取っておいて損はないよね」 ネロは、にこにこしながら歩き出しました。 上空では、元飼い主の貧乏性っぷりに泣き始めた大型犬がいたとかいないとか。 ネロは一人、風車のある広原にやってきました。 そして、いつもの日課の風車のデッサンを始めました。 しかし、なかなか手が動きません。どうしたと言うのでしょう。少年は、ポシェットに手を伸ばすと、一枚の干し肉を取り出しました。 「いつもは君が横に居てくれたんだよね。だから僕は笑顔でいれたんだ……パトラッシュ」 少年は、愛おしそうに干し肉に語りかけます。 「君がいないと、僕は絵も書けない……!君がいないと何をしようとも思えないんだ。 僕は君を……」 涙をぽろぽろと落としながら、少年は友の肉片に独白します。 「君を―――愛していたんだ」 堪えきれなかったのでしょうか。ネロは肉を両手で握りしめて号泣し始めました。 なんと言う事でしょう。少年は獣kan……(ゲフンゲフン!)パトラッシュを愛してしまっていたのです。 人と獣の友情を超越した愛!なんという―――無様。 「うぅ、ぐす……パト、ラッシュ……君に会いたいよ……」 涙でぐしゃぐしゃの顔を拭いもせず、ネロは語りつづけます。 やがて時間は過ぎ、太陽が空の真上に来る頃。少年は重い腰を上げました。 「……帰ろう。こうしていても何にもならないや」 手早く荷物を纏め、少年は帰路につきました。 道中はいつもと変わりなく、ネロはそれが気に入りませんでした。 「もう彼はいないんだ。なのに、この世界は何も変わらない。……替わらないんだ」 少年は肉片を握り締め、とぼとぼと家路を歩きました。
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