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わぅん、わぅん!と、けたたましい鳴き声がする。
「……うぅ~ん。パトラッシュ、も少し寝かせ―――」
……待って、待ってほしい。何故僕は今パトラッシュと言ったんだろう。
確かにパトラッシュは僕達が食べた。
でも、この頬を舐める舌の感触は、労るような優しい息づかいは……。
僕は、ゆっくりと目を開いた。
わぅん、と一声鳴くと、パトラッシュは僕にすり寄ってきた。
間違いない。この体温は、間違いなくパトラッシュだ。
生きて……いた。
いいや、今までが夢だったのだろう。
「パトラッシュっ!」
僕は堪らなくなり、彼を抱き締めた。
「もう、絶対に君を離さない。離さないから!」
それから、僕はわんわん泣いた。多分、一生分泣いたと思う。その間も、パトラッシュは僕の頬を優しく舐めてくれていた。
ひとしきり泣いて落ち着くと、僕は周りを見渡した。
だんだんと記憶が蘇ってくる。
僕は、今目の前にあるルーベンスの絵の前で、パトラッシュと一緒に行き倒れた筈だった。
急にお腹がぐぅと鳴る。
当たり前だ。僕は空腹で倒れたんだもの。
「でも、もう君を食べたりしないよ。あんな思いはもう二度と嫌だ」
パトラッシュは、不思議そうに頭を傾げた。
「……もう少しだけ寝よう。もう外は赤いから、きちんと日が明けたら、また頑張れるから」
きっと、君となら、また頑張れるから。
今度は地面では無く、椅子に腰かけて机にうつぶせになる。横に乗ってきたパトラッシュの体温が優しくて、また涙がでてきた。
半分閉じた目を窓に向けると、赤い朝焼けが強くなっている。
もうすぐ朝になる。
また新しい一日が始まれる。
僕の意識は、ゆっくりと眠りへ落ちていく。
少し外が煩い気もするけど、あまり気にはならない。
「ぶるぅうわははははははは!!比叡山よりよく燃えるわ!!やっぱ焼き討ちは良いなぁ!ぶるぅわははははは!」
第一、何を言ってるか解らないし。何語かも解らない。まあ、キ〇ガイなら警察がどうにかするでしょう。
そうして、僕とパトラッシュは深い眠りについた。
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