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私は今でもこの時のことをしっかりと覚えている
学校から帰った私を出迎える家族と家
その家族と家がいつもとは打って代わり、燃え上がる赤に染まっていた
近くから消防車の音が沢山聞こえる
赤は止むことなく空へ空へ高くなる
気がつけば私は赤の中へ走り出した
熱い…熱い。
臭い、喉が痛い…。
目が霞み、声が出ない
それでも私は家族の安全を信じて探した
だけど
「…お母さ、ん!!」
台所で倒れている母の姿
私は涙を流して近寄る
リビングでは父が…。
私に遅れてやって来た救急隊が二人を外へ運ぶ
大きな大きな赤の中
私は火事の原因を探した
でもどこにも見当たらない
ガスも使っていない
タバコも吸った形跡が無い
混乱する頭とジリジリと痛む背中
痛む背中は多分火傷している
そう気付いた時には
私に意識は朦朧としていて
頭に衝撃が走った
倒れたのだと理解した私は
助けを求めようと手を伸ばすが
手を伸ばすどころか目を開けることすらできなかった
お母さん
お父さん
………尚は?
私の…大切な弟…は…?
尚の学校は今日…休…み…
ふと誰かが私を抱き上げた感覚に陥った
そこから私は意識を手放した
「…──ッ尚!!!」
大きく、叫び声にも似た声で弟の名前を呼ぶ
「姉ちゃん?…起きたのか!?」
目を覚ませば目の前に尚の姿
尚は切羽詰まった様子で私に語りかけた
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