序章Ⅰ~黒騎士~

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      “奪われるのが嫌なら、何よりも強くなれ” それが、彼女と初めて出逢った時に言われた事。 「た 助けてくれッ!!」 “守りたいモノを全て守れる様に” オレはその言葉を信じて、がむしゃらに強さを求めた。 「金ならいくらで――!!」 命乞いを言い切る前に、オレは今回のターゲットである男の胸を剣で貫く。 彼女との出逢いから数年、オレは奪われる側から奪う側となった。 義賊組織“断罪の騎士団”の序列第三位“黒騎士” それが今のオレの地位。 権力に縛られない権力を裁く力。 権力者達はオレを恐れ、横暴な権力に怯える者は、オレを英雄視する。 オレは強くなった。 何にも屈しない圧倒的な力を手にした。 何でも守れる力を手にした。 それでも、 それでも、オレは何を守れば良いかわからないでいる。 空っぽの体が、今日も他者の命を奪う。 未だに消えぬ、どうしようもない喪失感だけを噛み締めて・・・・        
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