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“奪われるのが嫌なら、何よりも強くなれ”
それが、彼女と初めて出逢った時に言われた事。
「た 助けてくれッ!!」
“守りたいモノを全て守れる様に”
オレはその言葉を信じて、がむしゃらに強さを求めた。
「金ならいくらで――!!」
命乞いを言い切る前に、オレは今回のターゲットである男の胸を剣で貫く。
彼女との出逢いから数年、オレは奪われる側から奪う側となった。
義賊組織“断罪の騎士団”の序列第三位“黒騎士”
それが今のオレの地位。
権力に縛られない権力を裁く力。
権力者達はオレを恐れ、横暴な権力に怯える者は、オレを英雄視する。
オレは強くなった。
何にも屈しない圧倒的な力を手にした。
何でも守れる力を手にした。
それでも、
それでも、オレは何を守れば良いかわからないでいる。
空っぽの体が、今日も他者の命を奪う。
未だに消えぬ、どうしようもない喪失感だけを噛み締めて・・・・
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