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「え、あ、うん」
どう取ればいいのかわからない言葉を言われて、凜はとまどいの表情を浮かべる。
その様子を見て、宋は歩くスピードを速めた。
「まぁいいや。早く帰ろ」
「うん…ちょっと待って――」
早足で歩いて行く宋を凜は走って追いかける。宋が言った言葉を深く考えるのを止めて。
凜が追いかけて行く様子を後ろから眺めていた成はため息をつく。
「あーあ。素直じゃないんだから二人とも。絶対両想いなのになぁ」
ちょっとだけ二人の様子を眺めて、二人とは反対の方向へ歩き出す。
「せっかく俺が手伝ってやったのに…。用があるふりしてさ。あーあ、俺も凜のこと好きだったのになぁ」
寂しそうに、でもすっきりとした表情で歩く成に、桜の花びらが、励ますように、包み込むように、美しく儚く舞い散っていた。
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