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しかし、ラルゴは彼の言葉を遮った。
『カイエン―――
これは命令だ。すぐに取り掛かれ』
問答無用か……
彼は上官に向かって敬礼すると司令室を後にした。
…………………
『アベル―――
気分はどうだ?少し落ち着いたか?』
『あぁ……』
彼は静かに答えた。
『あのアンドロイドの事なんだが…
上からの命令でマインド・コントロールをかける事になった。それで主人としてお前が任命された』
こんな残酷な話があるだろうか…
《最愛の妻を殺したアンドロイドの主人になる》
破壊したい程憎い相手と供に生きることが出来るはずがない。
カイエンはそう思った。
しかし、これは上官の命令だ。軍人である彼らにとってそれは抗ことの出来ない力……
『……』
アベルは黙ったまま俯いている。
『お前の辛い気持ちはよく解る…
ただよく考えろ。母親を亡くし、軍人である父親もいつ死ぬか解らない中で、まだ乳飲み子の子供の面倒は誰がみるんだ?
アンドロイドは主人の直系に仕える。お前にもしもの事があった時、優秀な『彼』なら安心じゃないか?…
こんな事は言いたくないが、軍人である我々にとって正しい選択だと私は思う』
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