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「出世などどうでもいい…」
「やっぱり親子だな…
なぁ、マリア。以前アベルが『赤き鬼神』と呼ばれていたと話した事を覚えているか?」
そー言えば聞いた気がする
「ヤツは本当に強かった…
すべてにおいて私と互角かそれ以上。戦場では君のように単独で突っ込み、必ず手柄をたてて戻って来た。
顔に帰り血をつけたまま右手で赤い髪を掻き上げ、左手には敵の大将の首をぶら下げている姿はまさに鬼そのものだった。
時折、そんな親友を恐ろしく思う事もあった…」
想像もつかない
私の前ではいつもやさしい父親の顔しか見せなかったアベル…
争いごとを誰よりも嫌っていたアベル…
私の中にも流れているのか?
その鬼の血が…?
両腕を抱き抱えながら俯く私の髪をカイエンがやさしく撫でる。
「マリアはマリアだ…
負けず嫌いで一途なところも、気が強くやさしいところも…
父親譲りのこの赤い髪も私は好きだよ」
まるで私の不安な心を見透かされた気がした。
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