あかいろのおと

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 でもね、私は普通なの。  たしかに、明るくて元気いっぱいな女の子、ってわけじゃない。からだだって自慢できるほど成長してないし、図抜けて頭がいいわけでも運動ができるわけでもない。うまく笑うことだってできない。ほんとうに、だめな女の子だって思う。かわいいね、だなんて言われるところは左目の下にある泣きぼくろくらい。それに、もしかしたら、少しばかりはうつの気があるかもしれない、けれど、でも、私は普通の女子高生。普通に友達と話して、笑って、将来のことで悩んで、両親と喧嘩して。泣いて。もっと明るくなりたいし、みんなとたくさんおしゃべりしたい。かわいくなりたいし、スタイルだってよくなりたい。おいしいものだっていっぱい食べたいし、大好きな彼と一緒にいたい。愛したいし、愛されたいの。私は、私のまわりにいる子たちと、なんにも変わらない。  特異でも奇異でも異端でも異常でもなくて。そんな肩書きなんて必要なくて。私はきっとごくありふれた女子高生。みんなとの違いなんて、個人差って言葉で片付くくらい、好きなミルクティがリプトンか紅茶花伝かっていうくらい、私にとっては些細な違いなの。  行為を理解してほしいわけじゃない。私にとっての当然が、他人にとっても当たり前だなんて思ってもない。同調も同情もいらないよ。そんな感情よりも、もっと私を気にかけてくれればいい。だってこの傷跡は、みんながお化粧して人の気を引こうとしているのと同じ。その方法がちょっとだけ珍しいだけだもの。だから、そんな顔しないで。私を見るとき、手首に巻いた包帯を見るとき、そんな目をしないでそんな表情浮かべないで。私は普通に生きているだけじゃない。もっとみんなと話したいだけだから。  ただ、ストレスを吐き出す方法が人と少し違うだけ。気の引き方が人と少し違うだけ。生きてるって実感する方法が、みんなと少し違うだけ。
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