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はじまりのあの日のことは、今でもよく覚えている。
中学2年生の時のバレンタイン。
2月14日。
放課後の帰り道、隣を歩く幼なじみの律也に義理チョコを渡したときだった。
「ありがと……実咲」
まだ午後の4時だというのに、突然目の前に影が差して、声を出すことも息をすることも出来なかった。
律也の唇が、あたしの唇に重なって……――。
カサカサで、寒さで冷たくなった唇。
頬を撫でる冬の風。
冷たい匂い。
黒のアスファルトを、白に染める粉雪。
“幼なじみ”の関係が壊れた、あの日。
あれから、“実咲”と呼ばれていたあたしは、律也にとって“奥村”に変わり、
あたしにとっての“律っちゃん”は、ただの幼なじみではなくなった。
あの日から、あたしたちの関係は、すごく曖昧。
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