1人が本棚に入れています
本棚に追加
吐く息の白さが、夜の闇の中でも見て取れる。
薄汚れたこの服では、凍える様な寒さを防ぎきる事など出来ない。
路面に積もる雪の道を、素足で歩く。
真っ赤に霜焼けを起こした足は、冷たさを通り越して激痛を覚えた。
「マッチはいかがですか?」
まるで、通りを吹き抜ける寒風の様に――
「すみません、マッチはご入用ですか?」
――私の声は、行き交う人の顔を顰めさせた。
……そう。マッチなんて、誰も求めていない。
わざわざ外に出てマッチを買いに来る人なんて、いる筈がない。
通りを行く人たちは、マッチなんか買う暇があったら、一刻も早く家で暖を取るに決まっている。
最初のコメントを投稿しよう!