マッチ売りの病み少女

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 吐く息の白さが、夜の闇の中でも見て取れる。  薄汚れたこの服では、凍える様な寒さを防ぎきる事など出来ない。  路面に積もる雪の道を、素足で歩く。  真っ赤に霜焼けを起こした足は、冷たさを通り越して激痛を覚えた。 「マッチはいかがですか?」  まるで、通りを吹き抜ける寒風の様に―― 「すみません、マッチはご入用ですか?」  ――私の声は、行き交う人の顔を顰めさせた。  ……そう。マッチなんて、誰も求めていない。  わざわざ外に出てマッチを買いに来る人なんて、いる筈がない。  通りを行く人たちは、マッチなんか買う暇があったら、一刻も早く家で暖を取るに決まっている。
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