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「……マッチ、マッチ……」
私は、少しはマシになるかと思って、エプロンのポケットからマッチを取り出し、それを擦った。
そして、燃え上がる炎を見ながら、家にいる筈のお父さんを思い浮かべた。
「私をぐーで殴るお父さん」
大っ嫌い。
「私を石ころみたいに蹴っ飛ばすお父さん」
痛い、痛い、痛い。
「私を犯すお父さん」
汚い、嫌い、痛い。
「私を、……?」
と――
マッチの炎の先に、お父さんの姿が映った。
「あ、あれ……おとう、さ……」
マッチの炎の中には、全身を炎に焼かれ、悶え苦しむお父さんが見えた。
――ぎゃあ!?
――助けてくれえっ!!
「……くす……くすくすっ……いい気味……」
思わず歪んだ笑みを浮かべながら、私は目を皿にして、悶え苦しむお父さんを見ていた。
そして、救いを求める様に伸ばされたお父さんの手を、指の骨が砕けるくらい思いっきり踏み潰してやろうとしたところで――
「あっ……」
――マッチの火が消えて、お父さんの姿も見えなくなった。
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