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「熱い熱い熱い熱いいぃぃいいあああぁぁああッ!!!」
全身の力を総動員した絶叫は、凍えて弱った喉を一秒で枯れさせた。
私は、全身にまとわりつく炎から逃れようともがいた。
それが不可能と悟ると、上も下も分からないまま意味もなく暴れ狂い、無様に躓いては、生まれたての子鹿の様子を早回しした様な動作で起き上がり、その一秒後には再び豪快に転び、それを何度も何度も飽きること無く繰り返した。
聴く者の鼓膜を切り刻む様な叫び声を上げながら、幾度となくダイニングの調度に体当りし、手の届く範囲にある家具をかたっぱしから粉々にした。
それは――マッチの火の向こう、踊り狂っていたお父さんの様に。
私も、お父さんと一緒になって、おびただしい程の黒煙を上げながら踊り狂った。
――パニックに陥った私に、それ以外の選択肢など見当たらなかった。
……やがて、お父さんに続いて、私も力尽きて――
糸の切れた操り人形の様に、お父さんの形をした炭の傍へ、真っ黒な身体を横たえた。
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