4人が本棚に入れています
本棚に追加
「けほん、けほん」
暖炉の傍は、いつも灰まみれ。
暖炉の傍に寝そべるわたしも、いつも灰まみれ。
「……けほっ」
今は丑三つ時。家族はみんな寝静まっている。
わたしも、いつもなら家中の仕事に身体を酷使して、疲れて泥のように眠っているところ。
でも、今晩はどうしてか寝入ることが出来ず、膝を抱えて追憶にふけっていた。
――シンデレラ、どうしたんだ?
――お前もこっちに来て、一緒に食事を摂りなさい。
――お父様、あの子は私達と一緒に食べるのが嫌なんだって。
――放っておいてあげましょう?
「……違います。本当は一緒に食べたいんです。
でも一緒に食べると、義姉様が後でいじわるをするんです」
――灰かぶり。
――私と娘は三人で演奏会に行くから、家事を全て終わらせておくのよ。
――そうよ灰かぶり。
――全く、小汚い格好をして。少しは私達を見習ったらどうなのかしら?
――無駄よお姉様。
シンデレラは万年灰まみれなんだから、どれだけ綺麗にしても小汚いままよ。
「わたしが灰かぶりなのは、わたしのせいじゃないのに……」
暖炉の傍で寝起きしているから、どうしたって灰にまみれてしまう。
「それに……わたしは、シンデレラなんて名前じゃない」
お母様が生きていた時、少なくともわたしは灰かぶりじゃなかった。
最初のコメントを投稿しよう!