モノローグ

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 暖炉の傍、お母様がピアノを弾いていて。  お父様は、そんなお母様の絵を描いていて。  わたしは二人の間のソファーに腰掛けて、二人の温もりに心を和ませながら、本のページを繰るの。  ――あなたは難しい本ばかり読むのね。  ――きっと、お父さんに似たのでしょうね。  ――お前は物静かな子だな。  ――きっと、お母さんに似たのだろうな。 「……お母様。お父様は変わってしまわれました」  以前のお父様なら、継母様や義姉様の狼藉を許したりはしなかった。  以前のお父様なら、わたしを『シンデレラ』などとは呼ばなかった。   「……お母様。どうしてこんなにも、人は人に対して不親切なのでしょう」  わたしには、義姉様や継母様の気持ちが全く分からない。  ……今のお父様の事も、良く分からない。  わたしは、困っている人がいたら手を差し伸べずにはいられない。  猫を虐める子を見たら、声を荒らげずにはいられない。  家族が死んで悲しんでいる子を見たら、わたしも涙を流さずにはいられない。  ……それが、普通だと思っているから。  だから、普通じゃない人の気持ちが、全く理解出来ない。
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