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「……お母様、エラは何か間違っていますか？」
記憶の中のお母様は、いつだって優しい……。
お母様は時折、わたしの将来を心配している風に顔を俯かせた。
――いずれ、素直なままでは生きていけなくなるのよ。
――世界は、善良な人ばかりではないのだから。
――とても信じられません、お母様。
――だって、お父様もお母様も優しいではありませんか。
――……わたしも、あなたと似ているの。だから、あなたの気持ちは良く分かる。
――わたしも、わたしのお母様――あなたのお祖母さんから、『人を疑う事を知らない娘ね、お前の将来が心配だわ』と良く言われたものよ。
――……もし、お母様の言うことが本当なのだとしたら。
――それなら、わたしは一体どうすれば良いのでしょう？
――大丈夫、あなたにはお母さんがついているもの。
――もし、優しくない人に傷つけられる様な事があったら、わたしに言いなさい。
――綺麗な事ではないけれど……それでも、出来る限り綺麗に生きる為の力を、あなたに授けてあげるから……。
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