torta(仮) 紹介文/拓真

2/8
前へ
/17ページ
次へ
   俺の名前は瀬野拓真。17歳、現役高校生。  一年くらい前から喫茶店『torta』でバイトをしている。主な仕事は注文聞いたり料理運んだり、まぁ所謂ごくごく一般的なウエイター。  今日も今日とて騒がしい同僚と、ちょっと危なっかしい店長のいる店へと向かっているのだが…… 「さぁサル、今から客を狩りに行くわよ!」 「アイアイサー!」  店先で早くも暴走気味の姉御を発見。後ろにひっついてるのは最近バイトに加わったサルだ。  残念ながら、それぞれ俺の先輩と友人でもある。(本当に残念だ) 「……出た端から物騒な事は止めて下さい、姉御」 「あらタクヤ、やっと来たわね!」 「タクマです」  タクヤじゃない。  しかし姉御は既に明後日の方向を向いて、さあ行くわよ! とばかりに腕をまくっている。  どうでもいいが一緒に騒いでいるサルの手にある虫取り網が目について仕方ない。なんでだ、違うだろうどう見ても。 「あれ、おはよう拓真くん」 「壱弥さん」  不意にチリン、と音がして、見ると店からエプロン姿の壱弥さんが出てくるところだった。エプロンに付けられたネコのワッペンは、壱弥さんのトレードマークだ。  おはようございます、と返して閉まったドアに目をやる。 「良いんですか、中に居なくて」 「うん、今お客さんいなくって」  今日はお昼頃に三組くらい来たんだけど、と小さく苦笑。  まぁこの店ぶっちゃけ裏通りすぎて目につかなゲフンゲフン、いやなにちょっと場所的に静か過ぎるところだしな、うん。    俺が言葉を選んで何も言わずにいると、壱弥さんはふ、と目許を和らげて、未だ店先で騒ぐ二人に目をやった。  まだ出発しない様子の二人は、何やら難しげな顔で何か話し合っている。大通り、商店街と漏れ聞こえる辺り、行き先を決めかねているようだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加