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壱弥さんの声を聞いてから、未だ行き先を決めかねている二人へと駆け寄る。
「商店街なら近いし――」
「でも大通りなら人が――」
「買い出しするんなら商店街でしょう」
あ、ヤッホーたっくん! と虫取り網を振り回すサル。誰がたっくんだ。
「タクヤも来るの?」
「タクマです。ちょっと心配なんで……荷物置いてきますから、待ってて下さい」
心配って何よー! と騒ぐ姉御をかわして足早に店内に向かう。
持ったままだった鞄を従業員部屋に置き、エプロンを着けたところでサルがひょこっと顔を出してきた。
「たっくん、姉御があと十秒で来いって」
んな無茶な。
「……とりあえず、その呼び方はヤメロ」
「えぇ何で! 可愛いじゃん!」
「キモイ」
ガーン! とショックを受けた様子のサルを置いて部屋を出ると、慌てて追いかけてきた。
「ヒドいよ拓ちゃん!」
「死ね」
「えええ! たっくんて呼んでないのに!」
同じだバカヤロウ。
とりあえず持ったままの虫取り網を置いてくるよう言って外へ出ると、待ちくたびれた様子の姉御が開口一番、
「遅い! 十秒で来なさいって言ったでしょ、荷物持ち決定よ!」
理不尽だ。
「……サルもまだですけど」
「じゃ二人とも!」
俺の決定はそのままらしい。
理不尽過ぎる気がしてならないが、道連れが出来た分良しとしよう。
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