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ずーっと、ということは。
この遊女は、峯岸が寝た時から隣に居続けたのだろうか。
なんて物好きな人なんだ、と思い、ふと視線を羽織に落とす。
『………あ、』
よく見てみれば、この羽織は姉が使っていた物と同じ柄。
懐かしい気持ちになったが、羽織を返そうとしていたことを思いだし、遊女を見る。
『あの、この羽織…』
遊女の顔を見た瞬間、
時が止まるような感覚。
羽織を持ったまま、遊女の手を引いて部屋を出た。
「…菜緒?」
部屋から飛び出す峯岸を、原田は物珍しそうな顔で見る。
遊女を連れて、泣きそうな顔をしていた峯岸。
「(どうも様子がおかしいな)」
野生の勘で正常ではないことを感じ取り、適当な理由で腹自慢を終わらせ、後をつけた。
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