第十三章:菜緒と菜歩

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「あそこは男所帯なんじゃ…」 『だから男装してるの バレてる人もいるけど、案外隠し通せてるよ』 「なんて馬鹿なことを…!」 峯岸の腕を、ぎゅうっと力強く掴んでくる。 「分かっているの、菜緒!? 新選組は幕府の犬、長州の仲間を殺しているのよ! 吉田さんやお父さんも、新選組に斬られて死んだ! そんな野蛮な人殺し集団なんてすぐ辞めて、長州に帰りなさい!」 峯岸の姉の言葉が、容赦なく原田の心に突き刺さる。 実際、新選組は浪士だろうと殺してはいない。 捕えて捕縛する、というのが大まかな仕事だ。 あまりにも抵抗するときは斬り捨てるが、例は数少ない。 しかし、新選組は京雀から忌み嫌われている。 そのため、悪い出来事は全て新選組の仕業だという、根も葉もない噂が流れている。 長州人の彼女が、噂を信じるのも、無理もない。
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