第二十四章:無愛想さんと槍遣い

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そして、時は流れて。 ある年の春、とある小さな村。 「父さん、母さん、見て! 桜の花びらつかまえたよ!」 咲き誇る桜の木からはらりと散った桜の花びらを、辺りを駆け回っていた少年が、はしっと捕まえる。 両親と思われる二人に、にんまりと得意気な笑顔を浮かべて、握られてくしゃくしゃになった桜の花びらを見せつける。 「あっ、お兄ちゃんずるーい! なみもつかまえるもん!」 頬を膨らませた少女が、兄と呼んだ少年に続こうと、不規則に舞い散る桜の花びらに挑みかかる。 その様子をじっと見ていた少年は、しかしすぐに妹と一緒に、桜の花びらを捕まえようと格闘を始めた。 「おーい、あまりはしゃいでると、転んじまうぞー」 少年等の父と思われる人物が、言葉とは裏腹に、幸せそうな表情で注意をした。 筋肉質で、見るからに短気で不器用そうな男。 原田左之助。    
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