第二十四章:無愛想さんと槍遣い

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茂は原田の希望で、徳川十四代目家茂公から一字頂いた。 菜美は、菜緒が名付けた。 どうしても'菜'の字は入れたいという希望で、異論は勿論なかった。 二人は大きな病気にもかからずに、すくすくと成長した。 この上ない幸せだと思う。 「(…本当に、幸せだ)」 嘘偽りなく、心の底からそう思う。 親バカかもしれないが、可愛い子供にも恵まれたから。 そして、菜緒とずっと一緒にいられるのだから。 左之助さん、と名前で呼んでくれるのも嬉しい。 時々隊長さん、と口が滑ってしまうところも、また可愛いくて、懐かしくて、嬉しい。 本当に、幸せだ。 幸せなんだ。 ………ただ。 もし望むのなら、もう一度。 『……左之助さん? どうしたんですか、さっきからぼーっとして』 菜緒の言葉に、はっとする。 いつの間に物思いに耽っていたのか、慌てて苦笑いを浮かべるが、菜緒はじーっと原田を見つめたまま。 こうなったら、菜緒は引き下がらない。
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