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茂は原田の希望で、徳川十四代目家茂公から一字頂いた。
菜美は、菜緒が名付けた。
どうしても'菜'の字は入れたいという希望で、異論は勿論なかった。
二人は大きな病気にもかからずに、すくすくと成長した。
この上ない幸せだと思う。
「(…本当に、幸せだ)」
嘘偽りなく、心の底からそう思う。
親バカかもしれないが、可愛い子供にも恵まれたから。
そして、菜緒とずっと一緒にいられるのだから。
左之助さん、と名前で呼んでくれるのも嬉しい。
時々隊長さん、と口が滑ってしまうところも、また可愛いくて、懐かしくて、嬉しい。
本当に、幸せだ。
幸せなんだ。
………ただ。
もし望むのなら、もう一度。
『……左之助さん?
どうしたんですか、さっきからぼーっとして』
菜緒の言葉に、はっとする。
いつの間に物思いに耽っていたのか、慌てて苦笑いを浮かべるが、菜緒はじーっと原田を見つめたまま。
こうなったら、菜緒は引き下がらない。
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