第一章:とんでもない女

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その日の夜、原田は永倉と平隊士を連れ飲みに来た。 いい感じに酒が回ってきた頃、原田はいきなり着物をはだけさせ、腹を見せた。 腹には一文字の傷があった。 「俺の腹はただの腹じゃァねぇ、金物の味を知ってるんだぜ」 「まーた始まったぜ…何回も聞いたっつーの」 松山藩の中間時代、上官の武士の者に「腹を切る作法も知らぬ下司め」と馬鹿にされ、腹を立てた原田が本当に腹を切って見せた。 傷は浅かったので、幸いにも命に別状はなかった。 その傷から、隊内で「死損ね左之助」というあだ名がある。 「(ん…?何か忘れてる気がするな… …そうだ、明日は早い時間に見廻りがあるんだっけ)」 まだまだ自慢し足りないが、隊務なら仕方がない。 永倉や隊士たちに別れを告げ、少しフラつく足で帰路についた。
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