~その、暗き森に咲く花に~

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カッ、カカッ、カッ... 黒板をチョークが叩く音が響く。 その黒板にはなにやら式のようなものが書かれているが、一見してもそれがなんなのかはわからない。 ここはなくなってしまったアスピオの代わりにリタが住む、ハルルの近くの森。 カッ.... 不意にチョークの音が止んだ。 少し逡巡して、全体を見回す。 顎に手を当てて、なにか考えているみたいだが、何が詰まっているのかまったくわからないわけで。 本の山の上でそれを見ていたユーリは起き出して、 「気分転換、行くか?」 「待って、もうちょっと…」 「そう言ってもう23回も書き直してるじゃねえか。少しは頭休めたほうがいいだろ」 よっ、と言って床に降りる。 さっきから見ることしかできなかったユーリにとってはまたとない暇つぶしのチャンス。 正直、こんなものを見ていてもつまらないだけだ。 まあ、そんなこと言った日には 「じゃあなんでここに来てるのよ。邪魔だから帰って」 と言われかねない。
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