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「太陽! カモ連れて来たよっ!」
一階の正面玄関に辿り着くなり。先輩は下駄箱によりかかっている『ツレ』とやらに向かって大声でそう叫ぶ。
カモって俺の事か……。
「おっ、今回は男か」
『太陽』と呼ばれる男は目線を先輩から俺に向けると、紅色の髪を揺らしながら背中を下駄箱から離した。
身長は大目に見て百八十センチくらいはあるだろうか、身長が百六十センチの俺よりも、頭が一個分くらい高い位置にある。
髪の毛が紅いせいか、近寄られると凄い威圧感があるな。顔や体格は特撮ヒーローとかに出てくる俳優並にスマートでイケメンなのに。
「オレは副部長の火野太陽だ。よろしくな」
そう言って大きな手を差し出す火野先輩に、俺は「どもっ」と返して手を握る。
目つき悪いから怖そうな人かと思ったけど、クールで中々良い人っぽそうだな。
「この子は芽藤君! 私が必死に追い詰めて捕まえた入部するかもしれない人よ!」
人並みにある形のいい胸をムンッと張って誇らしげに言う先輩、火野先輩は深いため息をついて前髪をかき上げた。
「芽藤……お前、SUPAS片手に追いかけて来る女の話を聞くなんて、中々物好きな奴だよ……」
俺の肩を左手で掴むなり、右手でグッと握り拳を作る火野先輩に、俺の頭の中は《?》マークでいっぱいになる。
聞くと、どうやら先輩は入学説明会の時から手当たり次第に新入生を追いかけていたらしい。
んで、先輩に追われた奴の殆どが学校の外へと逃げ出したという……まぁ、新しい学び舎に期待を膨らましていた新入生を一瞬にして絶望へと落としているな。この先輩。
しかし、何人かは話を聞いてくれる者はいたらしく、そこから入部した人もいたというのだから驚きだ。
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