24人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ……はぁ……っ!」
春の暖かい日差しがさんさんと降り注ぐ中、無事に入学式を終えた俺こと芽藤誠司は、只今、絶賛廊下を全力疾走していた。
さっきからずっと走っているせいか、全身からは大粒の汗が滲み、おろしたての学ランをグッショリと濡らして冷たい。
(クソッ! 何で今日はこんなにもツイてねーんだよ! 占いでは「今日は素敵な出会いがあり、最高の一日となるでしょう」とか言ってたくせに!)
俺は毎朝テレビの中で爽やかな笑顔を見せて占いをするお姉さんの顔を思い浮かべながら心の中で毒づき、階段を一段飛ばしで駆け上がる。
実際、今日はとことんツイてなかった。
登校中にはタバコを吹かしながら現チャリをかっ飛ばすばーさんに轢き殺されそうになるわ、同じ学校に入った友達とはみんなクラス別々。しまいにゃ、入学式中に朝飲んだ牛乳が腹にキたらしく、今までずっとトイレの中で腹痛と格闘するハメになる始末……これを『ツイてない』と言わずして、一体何と言えゃいいんだ。全く、まさか一番最初の友達が便器になるとは思わなかったぜ。
……まぁでも、今考えればとても良い奴だったよ彼は。俺の思いを全て受け入れてくれる寛大な物をお持ちでしたし……っと、今はそんな事考えてる場合じゃねぇ!
俺は入学式の間ずっと側にいてくれた彼との過ごした時間を心のタンスにしまいつつ、廊下を駆ける。駆ける。駆ける。
そして、一番奥にある理科室の扉を乱暴に開けた俺は、室内に誰もいないのを確認するなり急いで教卓の下に潜り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!