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「ぜぇ……はぁ……」
まるで別の生き物のようにバクンバクンと鳴る心臓のある胸を押さえ、呼吸を整える。……あー、超苦しい……。
「……でも、さすがに《奴》も俺がここにいるとは思わな――」
と、だいぶ呼吸が落ちついてきた俺の言葉を遮るかのように、廊下からカツーンと上履きを鳴らして歩く音が聞こえる。
それと同時に、なにか小さな物がコロコロと転がる音も聞こえた。
「……冗談だろ……」
教卓の下で体を丸めた俺は、次第に近づいて来る足音を前に小さくそう漏らす。
仮に、もしこの足音の正体が先生だったら、一言「すんません」と謝れば済む話だろう。
……しかし、もし先生ではなく《奴》だったら……一言謝れば済む話じゃないと思う。たぶん……いや、絶対にだ。
あぁ、ここに隠れるくらいだったら外に逃げればよかったなぁ……と、少し反省。
まぁいい、ここに《奴》が入って来たとしても、息を殺してやり過ごせばいいだけの話だ。
俺はゆっくりと目を瞑り、できるだけ小さく息を吸い。吐く。
……よしっ、いいぞ! 足音が止まった! ここには誰もいない……ここには誰もいないからな!
俺の想いが天に届いたのか、止まっていた足音は一歩、また一歩と理科室から離れる。
「……ふぅ、助かった……」
と、体の中に溜まった物を吐きだすかのように息を吐いた瞬間、バーンッという耳をつんざくような轟音と共に、理科室の扉が外れ。勢いよく倒れる。
不意打ちとも言えるその音に、俺の体は意気消沈。完全にブルッてしまっていた。
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