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「本当に行っちゃうんだね……」
僕は胸が張り裂けるような思いを縫い付け、呟いた。だけどまだ名残惜しさが残っていた。
「うん。そろそろ私も帰らなきゃさ……」
彼女の声はわざとらしいほど明るかった。
彼女の目の前には元の世界へと繋がる白く輝く次元の裂け目。
「そっか……」
僕や彼女には様々な傷がついていた。その傷は何故か今までのことを思い出させてくれる。
突然僕の目の前に現れた異世界の存在。そして始まった同居生活。
彼女にはいろいろ救われた。
いじめから解放してくれたのも彼女だった――
立ち向かう勇気を教えてくれたのも彼女だった――
僕の生活を楽しく飾ってくれたのは、他ならぬ彼女だ――
人々を『悪』から救ったのは――彼女なのだ。
そして今、僕達の周りを様々な人が囲んでいる。そこにはかつていじめっ子だった子もいた。
みんなに彼女の存在を理解してもらうのに時間かかったなあ……
「ほら、泣くな。男だろ?」
いつの間にか僕は泣いていたらしい。気付いた時には僕の頬を涙が伝っていた。
止まらない。
そんな僕を見て、彼女は首にかけていたペンダントを外し、僕の手にそっと握らせた。
「いい? 私がいなくなっても貴方の生活は続くの。周りのみんなだって私と同じ貴方の仲間なの」
彼女は微笑んだ。しかしその笑みはぐしゃぐしゃだった。
「私がいなくなっても貴方は十分やっていける」
同年代である彼女に諭される。僕が赤くなったのは羞恥のせいか。それとも――
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