第五章 東海道中膝栗毛……?

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般若面をつけた忍びが、半蔵をお縄にして足蹴にして立っています。 天狗姫は勢いよく般若面を指差しました。 「あんたが世鬼政直こと兎ね!」 憤慨して言う天狗姫に般若面の忍びは、くつくつと喉で笑います。 「いかにも。拙者が世鬼有兎政直。兎と呼ばれる抜け忍始末屋にござる」 「私たちを始末しようって言うの!昔の因縁なんて馬鹿らしいっ」 「そうは申しても先祖代々、天狗衆始末を仰せつかっておる。よって、それは果たされなければならぬ」 淡々と語る兎に天狗姫の怒りは頂点。 「意固地な筋の通らない馬鹿者ね。今の天狗衆は初代天狗衆と何の繋がりもないわっ」 「佐治家は残っておるではないか」 「末流だから知らないわよっ」 天狗姫も説得に欠ける語りなので、しびれをきらせた地蔵が達磨から貰っていた黄達磨の煙幕を投げつけます。 ぷしゅうっ……と気の抜けた音を出して転がる黄達磨たち。 煙はまったく出てこず、兎の足元にただその黄色い姿を晒しているだけです。 「あれ……?だ、達磨の旦那、こいつぁいったい……失敗作かい?」 「そんなはずはない」 煙にあわせて突っ込ませるはずだったからくり人形片手に首を傾げる達磨。 すべて壊れているのだろうかと、今度は河童が黄達磨の目を押してみます。 瞬間、ぼふんと音を立てて燃えだしました。力を入れすぎて壊したようです。 「何なのよ、あんたたちは!!」 天狗姫は怒り任せに腰の刀を引き抜きます。そして、構えた途端、ちゃりんと音がし、銭をぶちまけました。 刀と小銭入れ用の脇差しとを間違えて引き抜いていました。 勿論、構えたその刀に刀身はありません。
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