おあとがよろしいようで

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お伊勢参りからの道中、京や大坂を楽しんで帰ってきます。 そんななか、兎はといいますと、天狗姫にぶつぶつ文句を言われ、辻講釈をさせられていました。 これがなかなか性にあっているのか、張り扇と拍子木を小気味良く使って話を語っていきます。 「時は寛永十一年正月の二十八日――……。なにがなにしてなんとやら~なにがなにまでなんとやら~。 ――……そんな弱音を吐くなよ畜生。人は一代、名は末代。人は死して名を残し、虎は死して皮を残す。講釈師は死んで扇を残し、馬は死んで太鼓となるというぞ。どうだ、太鼓にならぬか――……」 などと調子よく語っていきます。 元々は御伽衆で上様の警護を兼ねていた忍び。話すことは上手いようです。 そのように兎には、様々な話をさせ、僅かな路銀も稼がせる天狗衆。 「暇を持て余さなくて良いわ。珍道中より素敵」 天狗姫はすっかりご機嫌。しかし、さすがに疲れた兎は隙を見て逃走。それを追うは半蔵で、二人とも体よく面倒な道中から逃れたのでした。 おかげで江戸までは、往きと同じような珍道中を地蔵と河童が繰り広げてくれました。 そうして江戸に帰ってくると、そこには人々……特に女子に囲まれた兎がいました。なんとこの男、城勤めを辞め講釈師として大盛況な様子。さらに驚くことに長屋は地蔵の隣り。 「勘弁してくれい……見張られてるみてぇで息がつまる」 そのせいか、地蔵は八丁堀の旦那にくっついていることが増えたそうな……。
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