109人が本棚に入れています
本棚に追加
そうこうしているうちに、婆さんが団子を持ってきました。
地蔵は待ってましたと言わんばかりに受け取り、団子を一串手にしました。
「うまそうだなぁ……て、裏が黒すぎる……ん?」
その団子は消し炭で焼かれ、焦げたほうを裏にされていました。他の団子はさほど焦げていません。が、手にしている黒い団子をもっとよく見てみると、火までついています。
地蔵は少し考えた後、にやっと口角をあげ、未だ珍妙な歌を詠んでいる河童へ、わざと火がついているほうを隠して団子を差し出します。
「河童、おめえは少し焦げめのある団子が好きだろい」
「まあ、そうだけれど……」
河童は少し首を傾げつつもひょいと団子を口にしました。
「あちっ!!あちち」
河童は顔を真っ赤にして、立ったり座ったりしながら、茶を一気に口に流し込みました。地蔵は、本当にわざとらしく河童を気遣うように駆け寄ります。
「大丈夫かい河童よ。たくっ、なんて茶屋だ、おい、婆さん!」
地蔵は茶屋の中へと入り婆さんに文句を言っています。
どうやら、団子のお代をけちるようです。
これを見ていた河童は、すぐに地蔵がわざと消し炭の火がついた団子を自分に差し出したのだとわかりました。
(地蔵め……見てらっしゃい。必ず仕返ししてやりますよ)
河童は恨めしげに地蔵のかわりに団子を睨みつけます。
その二人の様子に天狗姫と達磨は、軽いため息をもらしました。
最初のコメントを投稿しよう!