第五章 東海道中膝栗毛……?

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道中そんなこともあり、一行はさっさと歩き小田原宿へと入ります。 さっそく天狗姫たちは、部屋に入ってから振り分けを下ろし、風呂敷包みやら手拭い、笠などを脱ぎ捨て一息つきました。 「こんなに長く歩いたのなんて初めてだわ」 「そうですねえ。埃にもまみれるし、疲れましたよ」 「こういう時は風呂に限るぜい」 そして、風呂に入るための順番を決めます。誰かが部屋に居ないと貴重な路銀を盗まれ兼ねませんから。 なんといっても、江戸から近江の往復です。最低、四両はかかります。 しかし、この貴重なお金。持ち歩くのは本当に大変なのです。細かく小銭にして、あちこちに隠し入れて持ち歩かなければなりません。両替屋が至るところにあるわけじゃありませんから。 地蔵は額の汗を手拭いで拭いながら、達磨へ風呂をすすめます。 「ここは年長の達磨から入ったらどうでい」 「いやいや、ここは身分高い姫から」 と、達磨は天狗姫に先に入るよう促します。天狗姫は、ゆっくり入りたいので最後でいいと言おうとして、 「じゃ、お言葉に甘えて先にお湯をいただくわ」 鼻唄歌いながら風呂へと行きます。 最後を躊躇ったのは、男三人の垢が浮いたお湯は真っ平ごめんだったからです。 そして、天狗姫がさっぱりとした後、達磨が入り、河童と続きました。 その間に膳が運ばれ、地蔵はほろ酔いになっています。 達磨は地蔵から猪口を取り上げ、 「おい、地蔵。河童があがったら次はおめえさんが風呂だ。酔って大丈夫か?」 「あ? なぁ~に大丈夫でい。心配すんない」 地蔵は上機嫌に笑っています。
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