第五章 東海道中膝栗毛……?

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さて、真っ裸になった地蔵は風呂の蓋を取り、勢いよく足を突っ込みました。 「!!!!っ」 とんでもない熱さに、声にならない悲鳴をあげ、風呂から飛び出ます。 「あ、あ、あぁ……、なんでいっ!この風呂はっ」 地蔵は跳びはねながら風呂に向かって悪態をつきますが、皆が平然と入っていたことに首を傾げます。 きっと、からくりがあるに違いない。地蔵は風呂の周りをぐるぐる見やり、次に辺りを見回しました。 すると、茂みに隠れた下駄が見えます。 「なんだ、これをはいて入るのかい。濡れてるとこを見ると、河童の奴もはいたのか。しかし、下駄を隠すなんざ餓鬼かい」 地蔵は下駄をはいて風呂へと入りました。 「おおぅ。こいつぁいい。熱くねえし、いい湯じゃねえか」 鼻唄をふんふん歌いながら湯を楽しみました。 部屋には、地蔵の愉快な鼻唄が聞こえてきます。さすがにこれでは鼻唄の域を超えていますが、地蔵が無事に風呂へ入れたことに、天狗姫と達磨は安堵します。河童だけは内心舌打ちをしました。 (下駄を見つけたのか……もっと奥まで隠せばよかった) などと思っていましたが、突然、地蔵の悲鳴が聞こえてきました。三人と宿主が慌てて駆けつけると……風呂が壊れているではありませんか。 「お客さん、一体……どうしたんですっ。風呂が壊れるなんて滅多にありませんぜ」 「ああ……いや……。つい浮かれて跳びはねちまって……」 そう言う地蔵の足には雪隠の下駄がはかれています。 宿主はびっくりして、 「お客さんっ、どうして雪隠の下駄をはいて入ったんです!」 「雪隠!?」 地蔵は目を丸くしつつ下駄を脱ぎ捨てます。
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