― 想い ―

8/8
1871人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
  少し錆ついた引き出しから包丁を取り出し、床に身体を横たえ、大きく深呼吸をする。 これが、私の最後の痛み… そして、ゆっくりと目を閉じ 思い切り左胸の辺りをめがけて その刃先を突き立てた―――… ―――うっ…… 鋭い衝撃と激しい痛みが襲い、一気に力が抜ける だんだんと意識が薄れ、温かい暗闇に包まれてゆく… ――もう、二度と開けられることのない瞼の隙間から、一滴の涙がこぼれて落ちた。 床に落ちたその滴は、カーテンの隙間から刺し込んだ木漏れ日に照らされ キラキラと輝き そして、静かに消えた…。    
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!