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「おい!!モタモタしてんじゃねぇ馬鹿共が!!そんな小娘一匹で疲れたとか言うなよ!?」
七人組の先頭を走る大男が声を潜めて怒鳴る。
着物や服飾品は目も当てられない程汚れているが、その袖から覗き出た腕は筋骨隆々。
大袈裟に着込んだ着物の下からでも大男の巨大な体躯は力が漲っているのが分かる。
下男達は皆一様に顔に疲弊の色を浮かべていたが、大男の一喝に震え上がり、ひいひいと下品な声を吐き散らしながらまたヨタヨタと走り出した。
その下男達の一連の動作に大男は一つ舌を打ち、些か機嫌の悪い様子で下男が担いでいた齢16程の小さな娘をひったくった。
大男の肩に担ぎこまれた娘は酷く怯えた様子で、その綺麗に澄んだ瞳には涙が溜まっていた。
「うかうかしてっと新撰組が来る!!早くてめぇらずらかるぞ!!」
ずんずんと大男が足を進めると下男達は慌てた様子でその後ろを必死でついて行った。
「こんばんわ。薄汚いおじさん達」
その瞬間、美麗な音楽の様なソプラノの声を七人組は聞き取った。
大男は同時に歩みをピタリと止めた。
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