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大男達から見て遥か前方に闇夜に浮き彫りになった提灯が一つ。
蜜柑色の光を灯したそれは獲物を食らわんとする獣の眼の様にゆらゆらと揺れている。
提灯の光で満たされた持ち手の着物の色は浅葱色。
泣く子も黙る幕府の人斬り集団 "新撰組" のチームカラーだ。
「そんな年端もいかない娘を強引に引き連れて…関心しないなあ。さしずめ、遊郭にでも売り飛ばすつもりでしょう?」
そうはさせませんよ、と腰に差した刀を鞘からゆっくりと抜刀する。
嫌に艶めいた刀身が大男達の恐怖に拍車をかけた。
「噂に聞いた事があるぞ。貴様、新撰組の沖田総司であろう」
大男はゴクリと喉を鳴らし、言葉を続けた。
「やめておけ。いくら貴様が鬼才の剣術の腕前であろうともこちらは総勢七名。痛い目をみるのがオチだ」
大男が言い終えた瞬間、飄々とした笑い声が辺りを満たす。
暗くて顔が見えない分、七人組にとっては些か不気味だ。
「何がおかしい!!」
大男はいきり立って背に差した大槍を中段に構える。
刹那。
沖田総司と呼ばれた男は笑う事を辞めた。
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